© 2017 Fujinaga laboratory

 
研究内容

1. 細菌とヒトとの相互作用について

 当研究室では細菌と宿主(ヒト)の相互作用を研究対象としています。
 なかでも細菌が産生するタンパク質毒素の多くは、微量で宿主に致死など大きな影響を与えるという特徴を持ちます。細菌毒素がこのような強力な作用を発揮できる理由の一つとして一般的に考えられているのは、多くの細菌毒素が微量でも宿主の機能分子に特異的に作用する酵素であるということです。
 もう一つ重要な細菌毒素の特質として、作用する基質に効率よくターゲティングする機構すなわち巧妙な輸送機構をもつ場合が多いことが挙げられます。その輸送機構は、もともと細胞が基本的・生理的にもっている膜輸送系やオルガネラの機能をうまく利用している場合が多いことがわかってきました。従って細菌毒素の輸送経路の研究は、毒素による病態発現機構の解明という意義に加えて、従来知られていなかった宿主細胞の基本的で重要なしくみを明らかにできる可能性も秘めています。
 このような研究は外来病原因子の侵入に対する宿主の防御システムを理解し制御する上でも重要です。当研究室は、腸管上皮細胞バリアを巧妙に通過してボツリヌス食中毒を引き起こすボツリヌス神経毒素複合体を研究対象として、本毒素の構造と機能の分子レベルの解析を中心に行っています。

2.クロストリジウム属菌による疾病の治療薬の開発

 国立感染症研究所などとの連携により、有効で安全な治療用抗体ボツリヌス神経毒素ヒト型モノクローナル抗体などを作製しています。

3. 細菌由来成分を用いた新規な有用物質の開発

 ユニーク粘膜侵入機構を持つボツリヌス菌無毒成分が粘膜ワクチンの輸送として有用であることを見出しました。安全で有効な粘膜ワクチンの実用化を目指して研究を行っています。
 また、E-cadherinに特異的に結合する活性を持つことが明らかになったボツリヌスHA(hemagglutinin)は、再生医療に用いる細胞の培養・加工に有用であることが、大阪大学工学部との連携により明らかになってきました。このように、基礎研究で得られた知見を役に立つものづくりに繋げる応用研究を展開しています。

今後の研究にこんな夢を持っています

 私たちの研究室では、ボツリヌス毒素が宿主に侵入する最初のステップである腸管上皮細胞バリア通過機構を解明することにより、食餌性ボツリヌス症の予防・治療のための基礎的な知見を得るとともに、このような研究を足がかりとして上皮細胞を場とする微生物病原因子と宿主細胞の相互作用の解明に取り組んで行きたいと考えています。
 私たちは細菌学と細胞生物学の両方に関わる学際的な研究を指向しており、このような研究により感染症研究に新たな可能性および発展性をもたらすように努力していきたいと思っています。また本研究のような学際的な感染症研究を通して、次世代の感染症研究を支える若手研究者を育成してゆきたいと考えています。若い世代には特に研究の楽しさ・発見することの醍醐味を味わってもらってそこからさらによい研究が発展してゆくことを期待しています。